多くの方々のご支援、ご協力により、特定非営利活動法人森林(もり)をつくろうは2024年に設立20周年を迎えます。
日本の森林の現状や林業の抱える課題、そして日本の森林を元気にする方法の一つとして木材利用があることを知ってもらうために、山林所有者をはじめ、林業、木材業に携わる者で2005年より活動をしております。
国土の約7割を占める「森林」は、私たちに美味しい空気と水を提供してくれる美しい場所です。しかしながらその森林も、山村地域の高齢化による林業担い手の不足や木材価格の低迷が主な原因となり、手入れが行き届かない場所も少しずつ増え始めているのが現状です。
先にも述べたように、森林は私たちにおいしい空気や水を提供するだけではなく、水源涵養や土砂災害の防止などといった公益的機能を有しています。この森林が持つ重要な機能を発揮するために、山村に暮らす人が森林管理をするだけではなく、私たち一人一人が森林の現状について関心をもつことが、まずは何よりも大切です。
中でも、森林を「誰が」所有し管理しているのかを知ることは、特に重要なことだと思っています。なぜならそれを知ることで、日頃触れることの少ない「林業」について、少しだけ皆さんに知ってもらえる機会になると思うからです。
私は、父で3代目となる素材生産業を営む家庭に生まれ育ちました。幼い頃から家族旅行といえば、父の山の調査に同行することが多く、父が山の中を歩き回って調査する間、母と弟、妹と4人で木の枝や葉を集めて遊んでいたことを記憶しています。その頃から、「個人」で森林を所有し手入れする所有者に、子孫のように可愛がってもらったこともよく覚えています。
所有者の方々は、自身の財産として、いつか子孫の役に立つよう、さらには地域の防災機能も担保できるようにと、代々一生懸命森林の手入れに取り組んでこられました。この努力無くして今の日本の緑豊かで多様性を秘めた森林は存在しないと言っても過言ではないと私は思います。
この豊かな森林を後世に繋ぐためには、林業や魅力ある産業として継承されていくこと、森林で生産される木材を有効活用することが欠かせません。

そこで、森林をつくろうでは
●植林や育林などの山林育成事業●広報活動事業●果樹収穫等や木工教室等の自然体験事業●国産木材P R事業
の4つの柱に分けてさまざまな活動を行っております。
最も力を入れている国産木材PR事業では、多くの人に国産木材や木造住宅の魅力を伝える活動を行っています。中でも、「新・木造の家」設計コンペは、法人設立当初より取り組んでいるメイン事業です。全国の大学等で建築を学ぶ学生を対象に、「伝統的構法」を用いた住宅の提案を募集し、一次審査を通過した学生には、審査委員や一般市民を前に作品をプレゼンテーションしてもらう企画です。
日本には、歴史ある木造建築が多く存在するものの、木造建築の勉強を十分にできる環境はほとんど存在しません。そのため多くの学生が、木造建築のことはもちろん、林業や木材の特性について理解する機会を持てずに卒業してしまいます。

そこで私たちは、森林・林業の活性化、木材の有効利用の促進のため、まずは木造建築に理解と関心を持つ設計者の育成が必要だと考え、前述の設計コンペ事業に取り組んでいます。

私たちが生活する全てが「環境」で、森林から川、海へと水が流れるそれぞれの過程に地域が形成され産業が営まれています。一人一人の生活がそれぞれの地域やそこにある産業との関わりの中で育まれていることを忘れずに、自然や他者との共生を図る社会が生まれたら幸せだなと思っています。
ー山を元気に、そしてみんなが幸せに・・・ー
2023年9月
特定非営利活動法人森林をつくろう 
理事長 佐藤和歌子